昨年2013年版では、その第5位にJIBs=日本・イスラエル・英国をアジア・中東・ヨーロッパの変化のトレンドからずり落ちていくもの(structual loser)として指摘し摩擦・リスクの要因として掲げていた。
中国と日本の東アジアでの摩擦の現実化を前に、世界2大経済国たる米中関係が模索中で不安定、と懸念する。米国は超大国の地位から後退し国際関係の中での立位置を再定義中、他方中国はまだ超大国とはいえない段階で国内外でどのように変革ができるかが習近平新体制の課題だし世界にとっても最大のリスク、という。
米国同盟の問題化という言い方で世界中でそれは顕著で、戦争ばかりしている中東でのイスラエル、独仏主導になりつつある欧州での英国など、いずれにせよ、
米国同盟はいろんな形があるが世界中で弱体していることはユーラシアグループの一貫した主張だが、2008年以来の世界経済危機が2014年には一旦終わるという認識と共に、この問題を2014年第一にあげます。
第2位「分岐する新興国」Diverging markets
という言い方で、ブラジル・コロンビア・インド・インドネシア・南ア・トルコの6大国で2014年は選挙年と指摘する。いずれも有力な指導者がいるわけではなく力をつけてきた中産階級がどんな判断を示すかによっては混乱もあるとする。なお、新興国でも中国は選挙制度がなく、ロシアの選挙制度は当てにできない、と中露は選挙制度という点ではこの6カ国以下と明確に言う。第3「新しい中国」The new China
を重ねてあげる。中国への関心の高さが分かる。少し丁寧に翻訳すると↓。中国は敷居をまたいだ。2014年は習近平新体制の1年目だが過去20年のうち最も保守的な政権だ。統治の安定を確保することが相変わらず最も大事な使命だ。しかし共産党の力は落ちておりこのことこそトップに上げざるを得ない理由だ。 過去20年知識層を抑圧し内部爆発の危険は内包し続けている。エリート層が分裂して社会的変革がおきるか、あるいは体制の崩壊にまで至るか、その可能性がある。中国政府は変革の道から外れることはできないし、今もたくさん変革中だがそれだけに不確実性は高まり、よりよくなるかあるいは大きく下ブレするか、両極端の可能性が一層強まっている。 中国の投資環境が好転し世界経済とうまくやれて変革が大成功となる可能性も高いが、世界第2位にまでなった経済運営にあって手綱を緩めたままでこのことが深刻な結果を生む畏れもある。 三つポイントがある。 第一は経済的不均衡を正せるか。特に金融面での国家の介入を緩和し国営企業の透明性を高めてより効率的で国家投資依存でない経済をつくれるか。 第ニは共産党統治の再構築。特にトップのありかた。民衆にメッセジを発し環境や福祉など人々の重要事項にちゃんと手を打てるか。 第三は、上記2つを変革を成し遂げるために、権力が一体となって新しいルールやメカニズムを作れるか。 大事なことは強すぎる中央集権を改めるしかないということに共産党指導部が気付くことだ。民衆の反発や官僚主義の弊害を除くため現指導部は腐敗撲滅や再教育に注力しているが他方で民衆圧迫の新技術を採用している(ネット言論制限や警察弾圧などのことか?)。 経済面で最も大きなリスクは金融部門だ。銀行の独立性やモラルハザードの問題でそのためには官民役割分担と自由化と不良債権処理が必要と指導部は分かっているようだが、Wang QishanやZhou Xiaochuan引退の2017までに急ぎ成し遂げることが肝要だ。 加えて指導部が軽視していることだが環境問題だ。国営部門の過剰設備と不効率を減殺することだが、ここも、中央政府が国営企業支援をやめることとルールによる運営、そしてここでも金融の不良債権防止や金利自由化が大事なことだ。 これらがうまく行われれば中国は引き続きうまく行くが、失敗すれば中国の産業体制には信用問題が発生し失業がさらに悪化し中国政府への信用は失われよう。 上記を行わないとするとこれまた中国自体のリスクを高めることになる。引き続き情報制限し情報操作し監視を続け反対派を押さえ込むことなど可能だろうし、また、全人民や国家安全会議は習近平体制を支持し続けることも事実だろうが・・。 他方で共産党は民衆の目を海外に向けさすべく、東アジア中国防空識別圏を発表した。反日感情をあおることなど国内的には有効だ。しかし同時にそれは地域の安全軍事情勢を変化させることにもなる。純粋に国内向けですむなら習体制がこうした敵意を煽ることは勝手だが、いまや世界の地政的緊張に直結することだ。 言い換えれば、中国は巨大で危険なそれなりの国になったということでこれがすべてだ。国内的にも対外的にも、今年は踊り場から一歩出る年、どういう第一歩を踏み出すか、極めて重要だ。
4位以下は↓目次のみ、詳細原文↑、略・・
4 Iran:イラン 5 Petrostates:産油国 6 Strategic data:特定政府や多国籍企業による戦略データ独占と支配・競争の熾烈化 7 Al Qaeda 2.0 :次世代アルカイダ 8 The Middle East's expanding unrest :中東不穏の強まり 9 The capricious Kremlin :気侭なプーチン帝国 10 Turkey:トルコ * Red Herrings:霍乱要因、米国内政治・欧州政治金融・シリア・北朝鮮
さて2014年版では日本については上記以外直接の言及はありません、しかし
昨年2013年版のJIBs記事、から参考まで
引用↓、トレンドとして何ら変わらないからです。http://www.eurasiagroup.net/pages/top-risks-2013
中国勃興・中東爆発・欧州混乱の3つが超大国米国なき(g-zero)世界の三潮流だが、この動きの枠外(構造的敗者 structural losers)にあるのが日本・イスラエル・英国だ。地政的に直接的に大きな問題を蒙る三国だ。 1)米国と特別強い結びつきを持っていたが今や期待できない、 2)中国・中東・欧州の変化の間近にいながら積極的に貢献できない 3)それぞれ独特の気まずい難しい関係にある ことも共通している。 日本は中国と難しい局面に入った。中国はもう日本を手本とせず技術も資本も日本以外から調達できるし、中国から見ればアジアに影響力を及ぼす際日本は邪魔者でしかないと中国指導層は信じ日本を挑発する準備を完了した。 最近の選挙で安倍政権が誕生し、日本側でもこれを回避しようとの動きはなく;単独ではもっとも重要かつ危険な地政学的衝突となっている(It's probably the single most important, and dangerous, geopolitical conflict on the horizon in 2013)。 以下略以上ユーラシアグループのコメントはいかにも米国流保守層の言いそうなことで、中国側からすればそれ(自由化や金融対策)こそ米国の間違いでありアホいうなの所もあろう。がまあ