元横綱日馬富士関の暴行事件で日本相撲協会は4日、東京都墨田区の両国国技館で臨時評議員会を開き、巡業部長を務めながら昨年の秋巡業中に起きた事件の報告を怠るなどした貴乃花親方(45)=元横綱、本名花田光司、東京都出身=の理事解任決議を全会一致で承認し、2階級降格処分が決まった。理事解任は初めて。2月に予定されている理事候補選挙には立候補できる。
臨時評議員会終了後、元文部科学副大臣の池坊保子議長と公認会計士の小西彦衛評議員が記者会見した。会見の要旨は以下の通り。
《まず、池坊議長が口を開いた》
「みなさまこんにちは。お待たせいたしました。本日11時より開催いたしました臨時評議員会で12月28日の臨時理事会で決議され、評議員会に付議された貴乃花理事解任の件を審議し、解任が決定しましたのでお知らせいたします。
解任理由は元日馬富士の暴行問題で報告義務を怠り、危機管理委の調査への協力を拒否したこと。これらはいずれも公益法人の役員としてはおよそ考えられない行為であり、役員の忠実義務に大きく違反していると思う。貴乃花理事が協会員としての報告義務を怠り、危機管理委員会の調査を拒否し続けたことによって今回の問題がここまで大きくなり、ここまで長引いている。
よって評議員会としてもその責任を重く考え、理事解任という結論に至った。相撲は申し上げるまでもなく国技であり、相撲道は礼に始まって礼に終わると言われる。貴乃花理事の本件における多くの行為、言動は理事の忠実義務に反していると同時に明らかに礼に反している。
特に上司であり、かつ先輩でもある八角理事長が何度携帯電話に電話をしてもまったく応答なく、折り返しの電話もないというのは著しく礼を欠いていたのではないか。
貴乃花元理事にはぜひ評議員会の理事解任決議を厳粛に受け止め、真摯に反省し、今後は協力し合い、礼を持って行動していただきたいと私は切に希望しています」
《報道陣による代表質問に移る》
--評議員会は全会一致で理事解任を決めたのか
「全会一致でございました」
--議論の中で違った意見は出たか
「私は評議員会において、大変丁寧に皆様方が納得いくような理解の上で議決したいと臨みました。高野危機管理委員長から今までの経緯のご報告を受けた。ここに至るまでの貴乃花親方へのさまざまな危機管理委員長が聴取なさった結果を伺った。
12月20日の理事会で貴乃花親方から意見書がでていた。その意見書も私どもは共有したいと思いましたので、事務局に読み上げさせ私たちも黙読し、それを理解した上で決議に臨んだ。
そしてまた、12月28日に理事会で危機管理委員長から説明があった後で、何か弁明がありますかと貴乃花親方に聞いたところ「危機管理委員長にお話しした通りです。弁明はありません」ということも付け加えさせていただきました。
そしてまた1人1人の評議員の方々のご意見を伺い、それらのことを全てみなさまがたが意見を出し尽くした後で評決ということにした」
--初場所後に理事候補選挙が予定されている。貴乃花親方が再び理事候補として挙がった場合の評議員会の対応は
「いまのところ、そのようなことをみんなで話し合っていないし、それについて考えていない。理事候補として挙がってきたならば、またお話の過程をへて、評議員会で真摯に厳粛に粛々と決めさせていただきます」
《代表質問が終わり、報道各社による質疑応答へ移る》
--処分について貴乃花親方にどういった形で伝えたか。それに対する反応は
「事務局から貴乃花親方の部屋に電話をした。親方はいらっしゃらず、電話を取り次いだ方に親方と話をしたいので、大至急連絡を取って、お電話をくださいという旨の話をした。12時に評議員会が終了し、いま12時半にここ(会見場)におりますので、ここに来るまでの30分までの間に親方からまだ電話が入っておりません。それから改めてお電話で伝えるとともに書類を持ってもきちんと伝達したい」
「事務局よりいまのご質問に対して付け加えさせていただきます。事務局の方に貴乃花親方からいま連絡があり「わかりました」ということです。本人からでございました」
--九州場所の初日前日の臨時理事会でこの問題をつまびらかにした場合、もっとスムーズに解決したのではないか。また、結果的に加害者側の伊勢ケ浜親方と貴乃花親方が同じ2階級降格となった
「11月1日に鳥取県警から事務局に連絡が入り、4人の名前をあげて被害届が出ています。4人の事情聴取をしたいと思うが、いま大切な本場所を控えているのでマスコミの方にも漏れないように、また力士たちも動揺しないように(九州場所)終了後に本格的な捜査に入りたい旨の連絡があった。
私は『県警も大変温かく人間味があるのだな』と、ちょっと感動した。それを受けてマスコミに漏れたり、また聴取したりすると力士たちも動揺するのではないか、力士たちにとって本場所というのは本当に命をかけた真剣勝負。彼らに専念させてあげたいという協会側の気持ちが十二分に働きました。
だから、隠蔽という意味ではなくそれを本場所を終えたら速やかにきっちりと皆様方にも公表し、そして鳥取県警と連絡を取り合いながら聴取をしたいという風に考えていた。
ですから11日の理事会でもそのことを伏せていたのが事実。ただ、その判断は大変難しいなと。私がその場にいてもどうしただろうかと考える。しかしながら、理事会、理事、ならびに評議員会はいつも協会の運営管理、そして協会が皆様方のご支援を得られるようにという気持ちを持っている。
理事には評議員会に対して、遅滞なく可及的速やかに報告をしてほしい旨を私たち評議員は理事長並びに執行部に進言した」
「それから二つ目。被害者と加害者。たしかに貴乃花親方は自分の部屋の力士ですからかわいいと思う。自分の子供だと思う。その気持ちは十二分に理解できる。
しかしながら、巡業部長という協会における三番目に大切な重責。巡業部長は自分の部屋の力士だろうが、気にくわない親方の部屋の力士だろうが、分け隔てをして対応してはならない。重責にあるということはそれくらい大変な責務を負っているということ。自分の部屋の力士だろうが、ほかの部屋の力士だろうが、同じように分け隔てなく対応しないとならない。
たとえば校長の子供が学校でいじめにあった。子供がいじめにあったらすごくつらい。でもその子だけ分け隔てしてはいけない。誰も親は安心してその学校に預けない。校長は自分の子だろうが、ほかの子だろうが、いじめにあったらみんな分け隔てなく対応しないといけない。
今回貴乃花親方が処分されたのは被害者だ、加害者だということを離れて協会としての巡業部長という重い地位に就いていることに反して報告義務を怠った、危機管理員会による調査への協力を拒否した。被害者、加害者ということで一緒にしないで、2つの問題を抱えている」
--さきほど鳥取県警から4人の名前が挙がったというが、どなたのことか
「日馬富士、白鵬、鶴竜、照ノ富士と聞いている」
--3月の評議員会で貴乃花親方を始め、処分された親方が立候補して当選した場合は評議員会で話し合って認めない可能性もあるか
「いま将来的な予測に関して私が述べるのは差し控えさせていただきたい。ただ、評議員会は理事会とは別個に相撲協会の管理運営などに対して正しく行われるようにする機関。そのとき評議員みんなが知恵を出し合いながら進めていきたい。
きょうは私もこれで終わりにしていただきたいと思うほど、膿を出し切りたい。皆様方の中でこれだけは聞いておきたいということがあればご質問いただいてけっこうだと思う。
いろんなテレビで一方的に報道されていることも多い。報道されると報道されっぱなし。正しい情報はこうですよと申し上げたくても申し上げる場がない。みなさまが不審に思うことがあれば、ぜひ聞いていただきたい」
--評議員会ではどのような意見が出たか
「貴乃花親方の弁明はどうなってるのか。私どもはきちんと12月20日に出された意見書をもう一度精査したり、危機管理委員長から伺ったりというのがあった。その弁明の中で違っていた部分もあった。貴乃花親方がおっしゃっていたことと危機管理委員会とでと違っているところがあった。その確認をした」
--事実関係が違う
「そうですね。事実関係はきわめて重要。事実関係が曖昧ななかで報道されるのはとても残念」
--評議員としてはどういうところを認定
「評議員議長は言ってみれば、評議員会の運営をする司会役。私は議決権を持たない。それは相撲協会の評議員会規則において議長は議決を持たない、同数の場合においてのみ議長が議決権を持つと定められているので私は議決に入らなかった。私以外の4人でなさって全員一致だった」
--解任はきょう付けか
「きょう評議員会が11時から開催され12時に終了したので解任は今日付。役員待遇委員になる」
--被害者である貴ノ岩関の現在の状況や今後については話がでたか
「今日の話の中では出なかった。私は一評議員として貴ノ岩のことを大変心配している。長く部屋にいればそれだけ稽古もできないし、本場所に臨むことができないのではないか。どんな状況か、私は大変案じている。本当にここで早く出てきてほしいというのを申し上げたい」
--きょうの貴乃花親方の処分を持ってこの事件は一件落着、そして膿は出し切って他にもう問題はないと言い切れるか
「膿を出し切りたいという私の願い。膿がそこにもあるよ、ここにもあるよということをいろいろとマスコミの方がほじくるのは私の力が及ばないところなので、言及はできない。
これだけマスコミに報じられるというのは皆様方が関心を持ってもらっているということ。たしかに暴力はいけない。自分の子供や孫を預けられるような暴力のない相撲協会にしないといけない。
そのために協会では積極的に再発防止へ研修会等々を開いている。これからもっと頻繁に開きたいと思っている。親方、力士がそれに協力してみんなで自分の子供を預けられるような、安心して預けられるような相撲部屋、相撲協会にしていきたい。
マスコミの方々もどうか揚げ足を取るのではなく、そういう方向でこれから報道してほしいと願っている」
--12月20日の臨時理事会で貴乃花親方が出した意見書をごらんになってどのような印象を持ったか。その意見書を踏まえても理事解任は妥当という判断か
「それを読んでもやはりその弁明はちょっとおかしいのではないかと思った。多少事実関係が違っていた。日時等でも。みんなそれを5人の、私は議決権はないが、きっちり読んでそのうえでやはりこれは理事解任に賛成をしたというのが実情でございます」
--小西評議員に伺いたい。議決権ある中で賛成した立場だが、今回の処分について所感は
「私は評議員会のメンバーで当事者。議長から説明申し上げました、これまでの経過を踏まえて理事として、また業務を担当していることを含めて理事として役割を職務を果たしていただく点で私どもは懸念があった。しかし、まだまだ年齢からしてもこれからがある。そういう意味ではまだ時間がありますね、ということを申したい。皆さんも人材ということで(貴乃花親方に)期待をされていると思う」
《質疑応答が終わると、池坊議長が「最後に一言」と切り出した》/futoji>
「どうかマスコミの方々は大切な問題で多くの国民が感心を持ち、テレビ、新聞などを見ているので事実関係を明確にしてお出しいただけたらと思う。
週刊新潮、週刊文春に(貴乃花親方が)激白と出ている。
ところが貴乃花親方に危機管理委員長がこれはどうなんですかと伺ったら、「いいえ、そんなようなことは言っておりません」というお話でした。ですから、元モンゴルにお帰りになった力士の方とのやりとりも「それは関係してない」という話もあった。
そのことに関して、社において、社のプライドにおいて事実関係をしっかりと把握しながらこれから報道していただけたらなと切に切に願っている」
《会見は約30分で終了した》