第4章 薬物犯罪者
第1節 犯罪の動向
1 覚せい剤取締法違反
覚せい剤取締法(昭和26年法律第252号)違反(覚せい剤に係る麻薬特例法違反を含む。以下この項において同じ。)の検挙人員(特別司法警察員が検挙した者を含む。)の推移(最近20年間)は,4-4-1-1図のとおりである。検挙人員は減少傾向にあるものの,毎年1万人を超える状況が続いている(検察庁新規受理人員については,CD-ROM資料1-4参照)。
4-4-1-3表は,平成25年に覚せい剤取締法違反により検挙された者(警察が検挙した者に限る。)のうち,営利犯で検挙された者及び暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。以下この項において同じ。)の各人員を違反態様別に見たものである。同年の営利犯で検挙された者の比率は5.3%であり,暴力団構成員等の比率は55.9%であった。なお,同年における外国人犯罪者の比率は5.4%であり,国籍等別に見ると,韓国・朝鮮(208人,35.4%)の者が最も多く,次いで,フィリピン(79人,13.4%),ブラジル(58人,9.9%),中国(台湾及び香港等を除く。
以下この項において同じ。32人,5.4%),タイ(32人,5.4%),イラン(28人,4.8%)の順であった。また,同年中に警察が検挙した覚せい剤の密輸入事件(119件)について,その仕出地の内訳を見ると,メキシコ(19件,16.0%)が最も多く,次いで,中国(18件,15.1%),インド(16件,13.4%)の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。
2 大麻取締法違反等
大麻取締法(昭和23年法律第124号),麻薬取締法及びあへん法(昭和29年法律第71号)の各違反(この項において,それぞれ,大麻,麻薬・向精神薬及びあへんに係る麻薬特例法違反を含む。)の検挙人員(特別司法警察員が検挙した者を含む。)の推移(最近20年間)は,4-4-1-4図のとおりである(検察庁新規受理人員については,CD-ROM資料1-4参照)。
平成25年における大麻取締法違反の年齢層別の検挙人員(警察が検挙した者に限る。)を見ると,20歳代の者及び30歳代の者の検挙人員が同程度に多く,両者で全検挙人員の約8割を占めている(警察庁刑事局の資料による。)。
4 危険ドラッグに係る犯罪
いわゆる危険ドラッグ(規制薬物(覚せい剤,大麻,麻薬,向精神薬,あへん及びけしがらをいう。以下この項において同じ。)又は指定薬物(薬事法(昭和35年法律第145号)2条14項に規定する指定薬物をいう。以下この項において同じ。)に化学構造を似せて作られ,これらと同様の薬理作用を有する物品をいい,規制薬物及び指定薬物を含有しない物品であることを標榜しながら規制薬物又は指定薬物を含有する物品を含む。以下この項において同じ。)に係る適用法令別検挙人員の推移は,4-4-1-6表のとおりである。
危険ドラッグに係る犯罪の検挙人員は,平成24年から急増し,25年は176人であった。
4-4-1-6表 危険ドラッグに係る適用法令別検挙人員の推移 | |||||||||
(平成21年~25年) | |||||||||
適 用 法 令 | 21年 | 22年 | 23年 | 24年 | 25年 | ||||
総数 | 11 | 10 | 6 | 112 | 176 | ||||
薬事法 | 9 | 9 | 6 | 57 | 37 | ||||
麻薬取締法 | - | 1 | - | 26 | 89 | ||||
危険運転致傷・自動車運転過失傷害・道路交通法 | - | - | - | 19 | 40 | ||||
その他 | 2 | - | - | 10 | 10 | ||||
注 1 警察庁刑事局の資料による。 | |||||||||
2 複数罪名で検挙した場合は,最も法定刑が重い罪名に計上している。 | |||||||||
3 危険ドラッグは,規制薬物(覚せい剤,大麻,麻薬,向精神薬,あへん及びけしがらをいう。) | |||||||||
又は指定薬物(薬事法2条14項に規定する指定薬物をいう。)に化学構造を似せて作られ,これら | |||||||||
と同様の薬理作用を有する物品をいい,規制薬物及び指定薬物を含有しない物品であることを標榜 | |||||||||
しながら規制薬物又は指定薬物を含有す物を含む。 | |||||||||
4 薬事法違反及び麻薬取締法違反は,危険ドラッグからそれぞれ指定薬物又は麻薬等が検出された | |||||||||
場合の検挙をいう。 | |||||||||
5 「その他」は,覚せい剤取締法違反,危険ドラッグ服用に係る保護責任者遺棄致死等である。 |
2 麻薬特例法の運用
麻薬特例法違反の検挙件数及び第一審における没収・追徴金額の推移(最近5年間)は,4-4-2-2図のとおりである。
第3節 処遇
1 検察・裁判
平成25年における起訴率は,覚せい剤取締法違反では80.6%,大麻取締法違反では46.6%,麻薬取締法違反では47.7%であった(起訴・不起訴人員等については,CD-ROM資料4-8参照)。また,同年のあへん法及び麻薬特例法各違反の起訴率は,それぞれ,21.4%,40.3%であった(検察統計年報による。)。
平成25年における覚せい剤取締法違反の第一審における執行猶予率(懲役に限る。)は,39.0%であった(CD-ROM資料4-9参照)。
2 矯正
覚せい剤取締法違反による入所受刑者人員の推移(最近20年間)は,4-4-3-1図のとおりである。
平成25年における覚せい剤取締法違反の入所受刑者の年齢層別構成比を男女別に見ると,4-4-3-2図のとおりである。女子は,男子と比べ,30歳代以下の年齢層の者の構成比が高い。
3 保護観察
覚せい剤取締法違反による仮釈放者及び保護観察付執行猶予者の保護観察開始人員・執行猶予者の保護観察率の推移(最近20年間)は,4-4-3-3図のとおりである。仮釈放者は,平成17年以降減少傾向にあったが,23年に増加に転じ,25年は前年から7.9%増加した。保護観察付執行猶予者は,13年以降減少傾向にあったが,18年からほぼ横ばいで推移している。覚せい剤取締法違反による執行猶予者の保護観察率は,19年から上昇傾向にある。
平成25年に保護観察が終了した覚せい剤取締法違反による仮釈放者及び保護観察付執行猶予者のうち,その終了が仮釈放又は保護観察付執行猶予の取消しによる者の占める比率は,それぞれ,4.1%,35.1%であった(保護統計年報による。)。