第2章 外国人犯罪者
第1節 外国人の在留状況等
1 外国人新規入国者等
平成25年における外国人新規入国者数は,955万4,415人であり,前年比200万4,417人(26.5%)増と大きく増加し,過去最高となった。地域別に見ると,アジアが78.0%を占める。在留資格別では,観光等を目的とする短期滞在が96.8%を占め,そのほかでは,留学(0.7%),技能実習(0.7%)の順であった(法務省入国管理局の資料による。)。
外国人登録者・在留外国人の年末人員(平成23年までは外国人登録者数,24年からは在留外国人数。在留外国人数は中長期在留者と特別永住者の合計である。)は,年々増加し,20年末には過去最高の221万7,426人を記録し,その後4年連続で減少を続けた後,25年末は再び増加に転じ,206万6,445人(前年末比1.6%増)であった(法務省入国管理局の資料による。)。
2 不法残留者
我が国に在留する外国人のうち,不法残留者の人員(平成8年までは各年5月1日現在の,9年からは各年1月1日現在の推計値)は,5年に過去最多の29万8,646人を記録した後,徐々に減少していたが,15年12月の犯罪対策閣僚会議における「平成20年までに不法滞在者数を半減させる」との政府目標の下,厳格な入国審査や関係機関の密接な連携の下での摘発等の総合的対策がなされるなどした結果,26年1月1日現在では,5万9,061人と,減少した(法務省入国管理局の資料による。)。
3 退去強制
不法残留等の入管法違反者に対しては,我が国から退去させる退去強制手続(出国命令手続を含む。以下この項において同じ。)が執られることになる。
平成25年に入管法違反により退去強制手続が執られた外国人は,1万1,428人(前年比24.7%減)であった。これを違反事由別に見ると,不法残留が8,713人(76.2%)と最も多く,次いで,不法入国1,128人(9.9%),資格外活動493人(4.3%)の順であった(法務省入国管理局の資料による。)。
第2節 犯罪の動向
1 一般刑法犯
4-2-2-1図は,外国人による一般刑法犯の検挙件数及び検挙人員の推移(平成元年以降)を,来日外国人とその他の外国人の別に見たものである。来日外国人による一般刑法犯の検挙件数は,5年からその他の外国人を上回り,最近では,14年から急増し,17年に過去最多となったが,その後,減少に転じ,25年は1万674件(前年比4.2%減)であった。
その検挙人員は,16年に過去最多となった後,24年までは減少傾向にあったが,25年は増加に転じ,5,620人(同3.6%増)であった。その他の外国人も合わせた外国人による一般刑法犯の検挙件数は,来日外国人の検挙件数の増減に伴い,17年に過去最多の4万3,622件を記録した後,18年から減少に転じ,25年は1万7,572件(前年比6.3%減)であった。また,外国人の検挙人員は,11年から増加し,17年に過去最多の1万4,786人を記録した後,18年から減少していたが,25年は増加に転じ,1万552人(同1.3%増)であった(CD-ROM資料4-2参照)。
同年における一般刑法犯検挙人員総数(26万2,823人)に占める外国人の比率は4.0%であった。
平成25年における来日外国人による一般刑法犯の検挙件数の罪名別構成比を見ると,4-2-2-2図のとおりであり,窃盗が72.6%を占めている。なお,来日外国人の場合,検挙人員一人当たりの窃盗の検挙件数は2.75件であり,窃盗の全検挙人員の場合(1.83件)に比べて多い(警察庁の統計による。)。
4-2-2-3図は,来日外国人による窃盗,強盗,傷害・暴行等について,検挙件数の推移(最近10年間)を見たものである。窃盗の検挙件数は,平成17年に過去最多を記録した後,18年から減少に転じ,25年は7,744件(前年比2.8%減)であった。傷害・暴行の検挙件数は,近年増加傾向にあり,25年は,16年と比較して約1.8倍になっている。
平成25年における来日外国人による窃盗について,検挙件数の手口別構成比を見ると,4-2-2-4図のとおりである。万引きの構成比が28.3%と高く,次いで,空き巣,自動車盗,車上ねらい,忍込みの順に高い(窃盗の全認知件数における手口別構成比については,1-1-2-2図P8参照)。
2 特別法犯
4-2-2-5図は,外国人による特別法犯(交通法令違反(平成15年までは交通関係4法令違反に限る。)を除く。以下この項において同じ。)の送致件数及び送致人員の推移(平成元年以降)を,来日外国人とその他の外国人の別に見たものである。来日外国人による特別法犯の送致件数及び送致人員は,いずれも,16年に過去最多を記録した後,24年まで減少していたが,25年は増加に転じ,送致件数4,745件(前年比12.3%増),送致人員4,264人(同14.4%増)であった。
来日外国人による特別法犯の送致事件は,罪名別に見ると,入管法違反の構成比が7割弱と圧倒的に高い。同法違反のほか,主な罪名・罪種について,送致件数の推移(最近10年間)を見ると,4-2-2-6図のとおりである。入管法違反の送致件数は,平成17年から減少していたが,25年は増加に転じ,3,232件(前年比32.7%増)であった。同年における同法違反の送致事件を違反態様別に見ると,不法残留が1,219件と最も多く,次いで,旅券等不携帯・提示拒否(在留カード不携帯・提示拒否を含む。)1,200件,資格外活動337件,不法在留241件の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。
第3節 処遇
1 検察
(1)受理状況
平成25年における来日外国人被疑事件(一般刑法犯及び道交違反を除く特別法犯に限る。以下この節において同じ。)の検察庁新規受理人員の国籍等別構成比は,4-2-3-1図のとおりである。
(2)処理状況
4-2-3-2図は,来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員(処理区分別)の推移(最近10年間)を見たものである。その人員は,平成17年から減少傾向であったが,25年は増加に転じ,1万2,770人(前年比5.2%増)であった。
なお,同年における来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員は,日本人を含めた全終局処理人員総数(35万9,111人)の3.6%,外国人被疑事件の終局処理人員(1万7,390人)の73.4%を占めている(CD-ROM資料4-5参照)。
平成25年の来日外国人被疑事件の検察庁における終局処理状況を罪名別に見ると,4-2-3-3表のとおりである。起訴率は,日本人を含めた全終局処理人員との比較で,一般刑法犯では4.4pt高く,特別法犯では16.1pt低いが,入管法違反を除くと,0.8pt高い(CD-ROM資料4-5参照)。
2 裁判
(1)概況
平成25年における外国人事件(外国人が被告人となった事件)の通常第一審での有罪人員は,3,235人(前年比5.5%減)であり,有罪人員総数に占める比率は5.5%であった(司法統計年報による。)。
平成25年における被告人通訳事件(被告人に通訳・翻訳人の付いた外国人事件をいう。以下この項において同じ。)の終局人員は,2,272人(前年比7.9%減)であった。通訳言語は42に及び,通訳言語別に内訳を見ると,中国語744人(32.7%),ベトナム語224人(9.9%),ポルトガル語222人(9.8%),タガログ語221人(9.7%),スペイン語171人(7.5%),韓国・朝鮮語170人(7.5%),英語145人(6.4%)の順であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。
(2)科刑状況
4-2-3-4図は,最近10年間の被告人通訳事件の通常第一審における有罪人員及び科刑状況(懲役・禁錮に限る。)の推移を見たものである。有罪人員は,減少し続け,平成25年は,2,156人であった(CD-ROM参照)。執行猶予率は76.6%であり,日本人(57.4%)と比べて著しく高い。入管法違反における被告人通訳事件の執行猶予率は94.8%と非常に高く,同法違反を除くと,被告人通訳事件の執行猶予率は71.8%であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。
3 矯正
平成25年における外国人の入所受刑者は,923人(前年比8.6%減)であった(矯正統計年報による。)。
外国人受刑者のうち,日本人と異なる処遇を必要とする者は,F指標受刑者として,その文化及び生活習慣等に応じた処遇を行っている。F指標入所受刑者人員の推移(最近20年間)は,4-2-3-5図のとおりである。その人員は,平成10年から急増し,16年に1,690人まで増加したが,17年から毎年減少し続け,25年は474人であった。同年におけるF指標入所受刑者を国籍等別に見ると,中国106人,ブラジル57人の順であった(CD-ROM資料4-6参照)。罪名別に見ると,覚せい剤取締法違反が148人と最も多く,次いで窃盗の130人であった(矯正統計年報による。)。
平成25年末現在,F指標受刑者の収容人員は,1,899人(男子1,671人,女子228人)であり,前年末比で,10.5%減少している(矯正統計年報による。)。
4 保護観察
平成25年における外国人の仮釈放者及び保護観察付執行猶予者の保護観察開始人員は,900人(前年比10.4%減)であった。
国籍等別に見ると,韓国・朝鮮296人,中国240人,ブラジル87人の順であった(CD-ROM資料4-7参照)。来日外国人に限ると,621人(同12.3%減)であり,その内訳は,仮釈放者が608人,保護観察付執行猶予者が13人であった(保護統計年報による。)。
平成25年末現在,外国人(永住者及び特別永住者を除く。)の保護観察係属人員は,仮釈放者454人,保護観察付執行猶予者51人の合計505人(前年末比1.0%減)であった。
なお,仮釈放者のうち,411人は退去強制事由に該当し,国外退去済みの者が340人,退去強制手続により収容中の者が65人,仮放免中の者が6人であった(法務省保護局の資料による。)。