中国最高検、周永康氏を逮捕へ 共産党が党籍剥奪
- 2014/12/6
【北京=島田学】中国共産党は5日に開いた党の最高意思決定機関である政治局会議で、最高指導部経験者の周永康・前政治局常務委員を汚職や職権乱用、機密漏洩などの容疑で党籍剥奪処分とし、刑事責任を追及することを決めた。身柄は司法機関に移された。中国の最高人民検察院(最高検)も周氏を法に基づいて立件・調査し、逮捕することを決めた。中国の国営新華社が6日伝えた。
刑事責任が汚職容疑となれば、最高指導部の経験者としては1949年の新中国建国後は初めて。新華社によると、党の調査によって、周氏が党内の規律に違反し、職権を乱用して不法に利益を得たり、本人のほか親族を通じて巨額の賄賂を受け取ったりしていたことが分かったという。その結果、国家資産に大きな損失を与え、重大な国家の機密漏洩の事実もあったとして、今回の逮捕につながったとしている。
習近平国家主席は就任直後から反腐敗運動を掲げ、党内での求心力の維持と権力基盤の強化を進めてきた。重慶市トップから失脚した薄熙来氏と近い関係にあった周氏は、反腐敗運動がターゲットとした「大物」の1人。習氏は党の最高指導部経験者の過去の容疑を追及しないという従来の慣例を覆し、周氏やその親族、側近らの汚職の追及を進めていた。
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中国、周永康氏が裁判なら「必ず公開」(2014/10/30 20:49)
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)法制工作委員会の信春鷹副主任は30日の記者会見で、汚職などの容疑で調査・立件された前最高指導部の一員だった周永康氏の裁判が開かれた場合の対応について「必ず公開するのが中国の憲法上の原則だ」と述べた。公開方法ではテレビで中継するかは分からないとした。
中国の裁判は関係者や国営メディアだけに「公開」されることもあり、実際に外国メディアが取材できるかは不明だ。
一方、共産党で司法部門を担う党中央政法委員会の姜偉副秘書長も同日の記者会見で、周氏の処分が党中央委員会第4回全体会議(4中全会)で発表されなかったことについて「周氏が現在、党中央の指導者ではないからだ」と語った。取り調べの進捗は「分からない」と述べるにとどめた。
周永康氏、公安トップ・石油閥で権勢(2014/7/30 1:16)
中国共産党指導部による異例の汚職追及の対象となった周永康・前党政治局常務委員は、2012年11月まで胡錦濤前政権で序列9位にあった前最高指導部の一人だ。これまで過去の最高指導部の問題については、追及すれば激しい権力闘争を招いて党を弱体化させるとして、不問に付すのが不文律だった。今回の習近平国家主席による追及は「党の歴史を塗り替える一線を越えた対応」と深刻に受け止められている。党は今回の発表文の中で周氏について、党員を意味する「同志」の呼称を付けずに伝えた。すでに容疑がほぼ固まり、年内にも党籍剥奪など厳しい処分を受けるとの見通しを裏付けるものだ。周氏は胡前政権で公安・司法部門のトップとして、警察機構や武装警察を指揮する強大な権限を握った。序列9位ながら他の最高指導部の面々をしのぐ権勢を誇った。もとは国有石油大手、中国石油天然気集団(CNPC)総経理の出身。エネルギー政策に影響力を持つ「石油閥」の中心人物として最高指導部にまで上り詰めた。党内では江沢民元国家主席らに近いとされる。重慶市トップだった薄熙来氏の失脚に猛反対し、胡前国家主席や習国家主席の反発を招いた。周氏が薄氏と共謀し、習氏の国家主席就任を阻もうとしたともいわれる。習政権になり、親族の石油利権に絡む巨額の収賄など多くの疑惑を指摘された。李東生・元公安次官など元側近らが相次いで失脚、息子の周濱氏も拘束されたようだ。四川省トップ時代には、側近の郭永祥・元四川省副省長と謀って当時の妻を交通事故にみせかけて殺害し、現在の妻と結婚したとの噂も流れている。